祖先の味
私の祖母は何十年も前に電車で見知らぬ男性から急に手紙をもらいました。
『私と一緒に転勤先の喜界島へ行ってくださいませんか。』
手紙にはそう書かれてありました。
耳を疑うような出会いですが、
祖母はその男性と結婚し、
喜界島へと移り住んだそうです。
その男性というのはもちろん私の祖父で、当時はれっきとした薩摩男児の数学教師でした。
数年後、祖父は妻と子を連れて鹿児島本土へ帰ってきました。
そしてある日どうゆうわけか、名を途絶えようとしていた『篠原家』へ養子に入ったのです。
受け継いだのは大正時代に建てられた木造の日本家屋と数々の山の土地。
そして、庭中に広がる沢山の梅の木でした。
100年以上たった今、それらの梅の木は変わらず多くの実をつけて、甘い香りを漂わせてくれます。
今回は私も福岡から帰省して、梅ちぎりの手伝いをしました。
炎天下夢中になって、汗を流した後に屋内へ戻ると、祖母が漬けた梅のシロップを氷で割って飲ませてくれました。
きっと100年以上も前から受け継がれている味なんだろうなと考えると、
その梅シロップは祖先の味の様な気がして、
祖母が祖父と出逢って、祖父が養子に入ってくれてありがとう。
そう強く思いました。
By Shelly
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